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技師の卵が幻想郷入り

ここでは東方projectの二次創作のうち『幻想入りシリーズ』と呼ばれるジャンルのの小説を公開をしています。 初めての方は『前書き』に目を通していただけるようお願いします。 何かございましたらbloodykey@hotmail.com(@は全角なので半角に直して使ってください)まで御一報をお願いします。 批評や誤字脱字のご指摘、知ったかぶりに関する的確な突っ込みを随時募集中しております。更新が滞って参りましたらこちらの方に目をお通しいただくもれなく管理人の現状がわかります。(mixiです。)http://mixi.jp/show_friend.pl?id=10875897

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第六話:竹林にて

どうも~。やっとこさ6話です。何とか出来上がりました。

今回はとある方とクロスしています。

向こう様の本編と関係ないですよ~。ではどうぞ。

▽本編へ

六話:竹林にて

(さてさて。どうしたもんかなぁ。)

手持ちでどんなことができるか考えるため、ぶちまけついで手荷物をひっくり返して確認してみた。
何かに見つかると危ないので極力音を立てずに広げた。

「…筆箱と本が…大小合わせて10冊。授業ノートと手帳。課外活動用のメモ帳。時計と財布
携帯は電源切るか。ポーチ、保冷ケース…中は塩あめってなんでこんなの入ってんの?!
水筒…ちょっと入ってんな。あとは工具箱その一、と。」

ぶつぶつと広げたものを確認し、手帳にメモを取ったあと再びサックに納める。

「手提げの方は、徹夜セット、繋ぎとTシャツと安全靴、製図用具と図面入れとぉ、大振りの工具が入った
工具入れその2…我ながら荷物多っ!」
(注釈:「安全靴」つま先に鉄板や強化プラのカップが保護として入った作業用靴。)

昔、冗談半分で荷物の重さを測ったら5kg前後あったような気がした。その時はそんなにものを
持ち歩いているつもりはなかった。おかしな話だが今日になってやっと実感がわいた。

「しっかし、里につかなきゃ役に立たんもんが多いな。」

とにもかくにも生き残るためには、竹林を抜けねばいけないだろう。
(里か香霖堂でもたどり着ければ、教科書を売って生活費の足しにでも……。)

周りのことを気にしながら、少しでも冷静に、状況を把握しようと努めた。

ざぁぁぁぁ
(うう、怖い怖い…いかん。深呼吸しよう。)

それでも、不安を煽るようにざあざあ竹が騒いでいる。時間帯関係なしにもここは危ない場所だ。
早く抜け出したい。
靴をはきかえ、左右のポケットに刃物を突っ込んでおく。最も、何かを傷つけるために刃物を
持ったことがないのでお守り代わりにしかならない。最後に、この場所の特性対策としてチェーン
で大型のカッターをつないで手に持った。万一、何かに襲われた時に相手の得物を受け流せるし、
もう一つ用途がある。

「よう、し。行くぜ私。」

小声で気合いを一発。闇に向かってまっすぐ歩き始めた。

一歩、一歩ゆっくりとストライドを大きめに歩いた。夜目はあまり利く方ではないが、今は安全の
ため明かりもつけられない。竹林(ここ)は緩やかな傾斜が広がっているのでこまごま歩いていたら
かえってまっすぐ進めないゆえの対策だ。では風景の単調さはどうするか?

「よいっせ。」

かつっ

胸の高さを目安に竹に進行方向の矢印を刻み、インクを流し込むように油性ペンで傷をなぞって
いく。遠目では分かりづらいが目印になった。大方8本に一回の割合で印をつけていく。




そんなことをもう何時間も続けていた。月はとうとう見えなくなりとっくに日付は変わっただろう。

「なんっで、何にも会わんのじゃー!!!」

息をひそめてだの、もうどうでもよくなるくらい、見事に何にも出会わなかったのだ。隕石が降ってくる
だの、宝くじが当たるだのが目じゃないくらいの確率の現象が起こっている。が、そんな問題ではない。

「もういっそるみゃに食われても文句は言わん……何かいないのかー…。」

そういった声はむなしく闇へ溶けていった。人恋しいどころか生き物恋しいといえるほど他者に飢えて
きた。だいたい何で自分がこんな目に会わなくてはいけないのかと自問したが、半分は自業自得な
ことを思い出し、むなしくなってきたのでやめた。これ以上考え始めたら、恐怖と混乱で頭がぐしゃぐしゃ
になるのは確実だからだ。何とかめげすに進むものの、進むにつれとうとう風がぱたっと凪いでしまい、
霧が立ち込め始めた。

「あーもう駄目だぁ……寝てやる。あたしゃあ寝るぞ。」

慣れない場所と歩き方に足も限界だった。やけっぱち気味でその場に座り、鞄の中から塩あめを
一つ出して口に放り込んだ。汗で抜けたぶん塩気がうまく感じた。水筒をあけ飲みきらないように
コップに中身を注ぎ、あめを飲み込まないように一気にあおる。甘いにおいと一緒に香ばしいお茶の
においが鼻に届いた。しばらく口をもごもごやりながらこれからのことを考えた。

(まずはここを抜けるのが最初で、運よく方向が合っていればすぐに人里に抜けられるはず。
かといって逆になっていたら…竹林の外周をまわんなきゃ。あーでも魔法の森が近接してる
はずだから境がどうなってるかにもよるなぁ。)

「ふぇ~。前途多難だ。」

口の中がすっかり空になったころ、何を考えてもその時にならなければわからないと投げやりに
結論を出した。そして、その場に5kgの荷を放り投げ、枕にして目をつぶった。バスでうとうとした
くらいだからか、疲れでそのまま寝つけてしまった。



不安になりそうな真っ暗闇から、ふっと突然視界が広がる
――それは深い紺碧の中だった。

底の方に恐怖はあったが穏やかに落ち着いた心地がした。

見上げればよく透き通って光る瑠璃が見える。

その光は穏やかに自身を揺すった。

そのたびに私にも光がついてゆらゆら揺れた。

その様を見ていて、自分の体に視線がうつり、驚いた。




目を開くと、朝だった。始めは一体自分はどうしたのか理解できなかった。昨日の夜のことが
ばっと頭の中にぶちまけられ、生まれて初めて一人で野宿したことを思い出した。それと反比例
して碧い世界が遠ざかり、だんだんとそれが夢だということにも気がついた。

(ああ、何とか生きてる。)

とにかく、嬉しかった。今朝もまた風が出ていて視界はぼちぼち良好。そっと立って五体満足
なのを確認する。思いっきり体を伸ばして深呼吸、ほっと溜息一つ。一晩経ったおかげでだいぶ
吹っ切れた。それに朝まで生きていたのだ。これはもう神様が好きにしろとGOサインを出したと
思おう。
何より昨日の『夢』で気持ちが楽になった気がする。

(あれは、何だったんだろう。)

 目が覚める直前で何かに驚いたところまでしか覚えていなかった。

「ま、いっかぁ。」

昨晩とおなじ『補給』を行い、簡単なストレッチで地べたに寝たことでがっちがちになった体を
ほぐした。また昨日のように支度をすると同じ方向へ向けてただひたすら歩き始めた。
 しばらく歩いていると、視界の端に生き物らしき影が見えた。はじめは見間違いかと思った
が、そいつは私の様子をうかがうかの様にちょろちょろと動いた。

(ついに第一幻想生物発見か?)

歩みをとめて様子をうかがってみる。と、相手が出てきた。


がさり
「えっと…うさぎ?」

 大きな体格の、それは間違いなくうさぎだった。初夏と言ってもよいこの時期に未だ純白の体毛
に包まれて、足のあたりに上等の絹紐らしきものが結んである。なりはかわいらしいが妖怪兎なの
だろう。素人判断だが害がなさそうなので構えたカッターの刃をしまった。

「お前さんの住処にいきなり入りこんで申し訳ない。スキマに連行されたものでね。」

 こんな場所だから相手に通じると思いそっと彼(または彼女)にだけ聞こえるようにつぶやいた。
相手も内容がわかったのかジィとこちらを見つめていた。

「出会ったご縁にすがるようだが、どこか休めそうなとこはないかな?」

 私の言葉を受けてか、ウサギは私の進行方向そのままにぴょこぴょこ数回跳ね、
「ついてこい。」と言わんばかりにこちらを再び見、鼻をふんふんと動かした。

「ご親切、感謝するよ。」

 そういってうさぎの後をついて行くことにした。ついて行ってみるとうさぎは時折止まり、あたりを
きょろりと見まわしてから少しずつ、曲がったり斜めに進んだりしていた。

(昨日から直進してたのって実はまずかったのかぁ?)

 地元住人ならぬ地元住兎には到底かなわないらしい。もっともリクエストを『休めるところ』と
言ったので人里に向かっているとは限らないが。だんだん遠くの方に建物らしきものが近づい
てきた。

「ここって…。」

 はっきりと見て取れるくらい近づいていくとそこは、外でもよく見知った場所だった。
うさぎは何のためらいもなく、その建物の柵から中へ(おそらくその先は庭だろう)に
入っていった。

「永遠亭だ。」

 呆けたようにその日本家屋を見上げた。屋根の作りが寺社仏閣に見られる合掌らしい形を
しているから、新しくて室町の時期のものだろうな、とかぼんやりそんなことを考えた。
ひと時は安全が確保される。そう安心し歩みを進めたとたん。



ばさぁっ!


 地面がなくなった。

「アッー!」

 そして体半分が土に埋まった。いわゆる落とし穴だった。情けない悲鳴をあげてすぐ、高い声の
大笑いが聞こえてきたのでティン!と来た。

「…やられた…。」

 私をここまで導いたうさぎ。特徴からして、あれは因幡てゐだったのだ。いたずらだけで済んで、
しかも案内してもらって文句は言えないが腹立つものは腹立つ。おまけに二日連続で落下系
トラップにはまるとはわれながら

間抜けだぜっ!(某ジョースター氏よろしく)

「~!!」

 そのままではどうしようもないのでひーひー言いながら穴から抜け出した。

「っしょっと。」

 土を払っていると建物の中から(おそらくてゐの)悲鳴が聞こえた。どなたか私の間抜けな
悲鳴に気がついたらしい。しばらくして柵の向こうから大人びた女性の声がした。

「大丈夫?」
「はい!生きてますよ、ばっちり。あ、そだ。いろいろ伺いたいことがあるのでお時間取れます?」
「ええ、いいわ。そちらから見て右手の方に行ってちょうだい。玄関だから。」
「了解です。」

(話し方からすると、ここの『お師匠さま』かな?)

 言われたように進むと立派なたたずまいの玄関があった。少し覗き込んでみるとあの柵の先は
やはり庭のようだ。

がらり

中から戸が空いた。開けたのは薬師のなりをした、妙齢の(外見的な意味で)美女だった。

「ごめんなさいね、うちのうさぎのせ……あら。」

 私のなりを見て目の前の美人――たぶん八意永琳女史は軽く目を見開いた。

「あなた、もしかして外来人?」
「ええ。放り出されたのが竹林だったものですから、お宅のうさぎ様に案内してもらった次第です。」

 彼女も多くの外来人に会っているのかこなれた対応だった。

「そう……むげにあそこまですることなかったかしら?
「……(ここは華麗にヌルーが吉だな。)」
「それはそうと、すごい恰好ね。顔色もあまり良くないわ。」
「あはは…夜中にこの近所まで歩き詰めでしたし、昨晩は野宿でしたから。」
「とにかく上がって頂戴。話はそれから伺うわ。」
「ありがとうございます。えっと。」

 いざ目の前にしてみると、初対面で名前を呼んでもいいものかと悩む。言いよどむと彼女は
ちょっと笑って言った。

「私の名前は知っていると思ったのだけれど。」
「!…お世話になります、八意先生。」

 かくして私は永遠亭に足を踏み入れることになった。

 八意先生の案内でパタパタと古いながらも趣味のいい屋敷の中を歩く。きれいなのは
手入れ云々以外にも場所柄で何かありそうだ。

「お名前、聞いてなかったわね。なんていうの?」
「百合香と申します。」

にしても、彼女は本当に美人だ。才色兼備に足がついて歩いているようなものだ。

(ほんとに絵巻とかに描かれている『月人』まんまだな…。)

 ここで何かに気がついて八意先生の歩みが止まる。私も正面に目を向けると予想外の
生き物が漂ってきた。

大福君
「おししょ~。」
「あら、どうしたの?」
「すこし、教えていただきたいことがありまして…。」



 なんぜ、もや○もん型のAspergillus oryzae?しかもZUN帽装備…可愛いじゃないか!(ぇ

「あ、お客さんですか?」
「ええ、百合香さんと言って幻想郷に来たばかりだそうよ。百合香さん、この子は
私の弟子の大福。あなたと同じように外から来たのよ。」
「あなたも外から来たんですか?」

可愛らしい声で、こちらに漂ってきながら彼は聞いてきた。

「うん。スキマにやられた。」

苦笑いでそう答えると彼は「あちゃー」と言った。

「それじゃあ、僕の本体と同じですねー。」
「本体とな。」
「博麗神社にいる俺から、何人か分裂していろんなところにいるんです。」
「流石、菌だねぇ。」
「ところで、大福聞きたいことって何かしら?」

 話が一区切りついたところで八意先生が大福に言った。

「急ぎじゃないんで今はいいです。師匠はお客さんの案内あるでしょうから。」
「悪いね、大福君。」

ちょっと申し訳なくて大福君に謝った。

「いえいえ。では師匠後ほど。」
「わかったわ、あとでね。」

彼は来た方向にすいーっと飛んで戻っていった。

「可愛らしいお弟子さんですね。」
「でも結構優秀なの、あの子。」

そういってほほ笑んだ八意先生の横顔はちょっと誇らしげだった。

 その後、案内されたのは畳が青々としている客間だった。床の間には薄紫の桔梗がいけられ、
部屋の真ん中にはがっしりとした卓と座布団があった。体に土ぼこりがたくさん付いていたので、
失礼して手拭いを敷いてから勧められたところに座った。

「上げていただいてありがとうございます。助かりました。」

ふかぶかと礼をした。

「いいのよ。てゐが迷惑をかけたようだし、今回が初めてということではないわ。」
「初めてではないといいますと…『外来人が来たこと』ですか?」
「そう。うちにもいろんな外来人が来たわ。今は違うところに住んでいるか、単に出かけて
いて結構出払っているけどね。」
「そうなんですか。」

(でもまさか菌まで神隠すとは思いませんでしたよ紫様…。)

とにかく、今の幻想郷は私の知っている幻想郷と思わない方がよさそうだ。
このことを改めて肝に銘じた。




楽屋裏(?)
紫:技師の卵が幻想郷入り第六話、いかがだったかしら?楽しんでいただけたら嬉しいわ。
藍:ってか、紫様。いつの間にあとがき乗っ取ったのですか?(汗)
紫:あら、ちゃんと作者に頼まれて仕方なくやっているのよ?
藍:そっそうですか。(カンペを見つつ)今回はっと、アンケートはないみたいですね。
どうも今回からちょこちょこクロスを行く予定と。
紫:調子こいて話を破たんさせなきゃいいけど。
藍:「ほどほどにします。」だそうです。
紫:ほんとに己の力量を見て程度をわきまえないとね。それではご一読ありがとうございました。
藍:ありがとうございましたー!

ひょこりと作者です。
今回オリゼーの方とクロスさせていただきました。本当にありがとうございます!
この方の菌だって幻想入り(リンク先はマイリスト)はもやしもんのモネラ界のまったり感と幻想郷の呑気さが
融合したすさまじい癒やし動画です。まだの方はぜひ醸されてきてください。

私事ですが、なぜか自分が登録したタグが生存率高い動画でもあります。1、2話にいれた
『でんぷんを糖に変える程度の能力』はあの幻想郷最狂の裸族こと(?)ピサロ氏の
ブログで「うけた!」のコメをいただきめちゃビビった記憶があります。
最近の『菌況報告』の犯人も実はおいらです。まあ、何が言いたいのかというと
そんなフレーズが思いつくくらいこの動画様が大好きだ!ということのほかならないのです。
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●Thanks Comments

クロスどうもですー(`・ω・)ノ

絵巻板より飛んできました。。
大福を使っていただいてどうもですm( _ _ )m
お礼といってはなんですが主人公の絵を描いてみました。
胸の大きさとか胸の大きさとか胸の大きさとか妄想入ってて申し訳ないっす(´Д`;;
あと配色も適当です。2Pカラー主人公とでもお考えくださいw

あと、最近ブログを始めたんですが
こちらのサイトをリンクに入れてもいいでしょうか?よろしくお願いします(`・ω・)ノ

From 【オリゼー(79)】URL2008.07.28 00:28編集

いらっしゃいませ

僻地へご足労いただきありがとうございます。
本当に大福ちゃんを書いていて、すごくなごみました。
お礼とのことで、うちの子の絵を描いていただきありがとうございます!
フォルダがホクホクですw
リンクの件ですが、こんなネットのド田舎でもよろしければぜひお願いいたします。
本当にありがとうございました!

追伸:せっかくと言ってはなんですが、こちらからのリンクといただいたものの掲載を行ってもいいでしょうか?

From 【こんぶまかろん】 2008.07.30 18:49

どぞ~

リンク承諾ありがとうございます(`・ω・)ノ

リンクと絵の掲載、全く問題ないですよ。。
ただあのヘボ絵が載るのかと思うと((((゚Д゚))))ガタガタブルブル

ブログはこちらです~
http://oryzae79.blog.shinobi.jp/

From 【オリゼー(79)】URL2008.08.01 02:04編集

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